システムを作業療法する―みんながイキイキする仕組み創り
超高齢化社会へ突入していく中,地域支援を軸とし,地域包括ケアシステムに代表されるように,行政・専門職種などが連携し,急務として積極的にシステムの構築や,それぞれの専門職としての活用に取り組んでいる。これらを背景に,地域事業に参入しているOTも増えてきている。在宅支援や地域での介入においては,よりその事例に合わせた個別的で具体的な支援が求められる。それらを構成する要素は地域の中に豊富に存在し,そこにいかに包括的に介入できるかがポイントになる。そのため,対象者を中心にさまざまな地域特性を生かしたシステムが積極的に,急速に構築されている。
一方で,急性期病棟・回復期リハ病棟に代表されるように,病院や施設内でのサービスはすでに体系化されており,リハの役割や環境が明確化された中で作業療法が実践されていると思われる。しかしながら,機能分化,チーム連携強化,在院日数短縮が推し進められる中,より事例に合わせた介入や地域支援への連携を考えた場合,すでに存在するシステムの中では,対応するのが難しいケースを経験することがある。
社会情勢に伴って刻々と変更されるサービス体系の中,現行のシステムの再考や,新たにシステムを構築していくことも必要かもしれない。しかし,システムの枠組みから実践を変えるのではなく,今の環境での目的を明確にしたうえで,実践からシステムにはたらきかけていくことも重要なのではないだろうか? 作業療法の特性を考えた場合,目的を達成するために必要な作業が必ず存在する。そこでのOTの役割は対象者のみでなく,とりまく環境などを考慮し,意味ある作業を導きだし,それを実践できるように援助することにある。つまり,今はない,もしくは実践している作業に色づけし,あらたな作業を創造していくことといえるのではないだろうか。これらのことを考えた場合,作業療法の概念を活かした介入や取り組みを見出し,たとえ小さな取り組みであっても,それを実践することで,対象者にとって有用なシステムの再構築につなげることが可能ではないかと考えられる。つまり,システムを作業療法することである。
この特集においては,その実践例を紹介いただいた。多くのOTの活動の一助となることを期待したい。
特集 システムを作業療法する―みんながイキイキする仕組み創り
編集担当 三瀬 和彦
地域移行支援に向けた作業療法士の介入 梶原 幸信 ●496
チーム連携に向けた院内教育システムへの関わり 山田 太一 ●501
高齢社会をデザインする―作業療法士は必要か 久保田 好正,他 ●507
管理職としての作業療法経過記録 関谷 宏美 ●512
品質マネジメントシステムを活用したシーティング・クリニックの取り組み 岩谷 清一 ●519
経営コンサルタントからみえる作業療法の今後と具体的対策 三好 貴之 ●525
烈闘作業療法
みんなの“わくわく感”で地域おこし 野津 裕二郎さん ●488
連 載
お家を変えよう!
介護保険と住宅改修② 児玉 道子 ●540
学校では習わないメソッド
「バリデーション」―認知症者とのコミュニケーションのヒント 浅野 有子 ●542
複眼で見る
マネジメント(management)について 浅野 有子 ●548
作業療法士が創る嚥下障害へのリハアプローチ
在宅版嚥下評価スケールの試用と結果 寺本 千秋 ●552
OTケアマネジャーはこうした!
私はずっとおしゃれでいたいの―Aさんからいただいた“気づき”と“学び”三浦 晃,他 ●557
コラム
らんどまーく
心豊かに生きるために―今,「これから」の作業療法 吉田 幸文 ●486
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
家族からみた認知症の症状(その2) 上城 憲司,他 ●531
女性OT ひとりで悩まないで
これまでの相談を振り返って 宇田 薫 ●532
なんでもできる100均グッズ
脱半ケツ!するっとズボンエイド! 大森 啓誉,他 ●534
勝手にOT番付
東西横綱 仲地 宗幸,他 ●536
OTとして私が大切にしていること
いきいきとした在宅生活が送れるように―共に歩む作業療法とシームレスな支援 嵜山 泰志 ●545
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●564
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
書評 ●570
総目次 ●572
はじまりのことば ●巻頭頁
既刊案内 ●569
インフォメーション ●571
次号予告 ●577