地域の総合力を高めるOTの視点—知って活かそう 介護予防・日常生活支援総合事業
2015年4月の介護報酬改定後,介護領域で勤務されている方々はその対応に追われ,医療領域で勤務されている方々は2016年4月に行われる診療報酬改定の行方に目を光らせている状況であると思う。今回の特集では介護予防・日常生活支援総合事業(以下,総合事業)に着目し,OTが地域に出向いていくために必要なことは何なのか考えてみたいと思う。また,総合事業に参画するために必要な知識や行政とのやりとりなど,医学的な知識以外のスキルが求められる時代になっている。OTは,住民の生活を守る専門職である。対象となる住民の生活の場で,できるかぎり在宅で安心して暮らしていくために必要な資源を地域住民と共に探し,開発していくことが求められる。
今後,社会保障費は抑制傾向が続くと考えられる。マイナス改定や入院期間の短縮,介護保険の自己負担増など,制度の枠組みだけでは解決しない問題が多々出てくると予想される。そのようなときに,医療・介護以外の社会とつながりをもつことが解決のきっかけになると考える。特に,総合事業においては行政やNPO,地縁組織,ボランティアなど多様な団体とのつながりが重要になる。いずれも,病院や事業所内にとどまっていては出会えない人たちである。“1歩踏み出す勇気”,1人でも多くのOTがこの言葉を胸に抱き地域に出ていくことを期待している。
さらには,地域をマネジメントするにあたり“地域診断力”が重要スキルになる。自分たちの住んでいる地域の高齢化率は? 将来の人口推移は? 基幹産業は何か? あらゆる資源を把握したうえで,高齢者の生きがいや役割づくりに必要な要素をつなぎ合わせていく作業が必要になる。
本特集では,総合事業における多様な事業の中で活躍されている方々に,その想いを書いていただいた。読者の皆様の地域で展開されている総合事業の,進捗や実施状況に関心をもつ“きっかけ”になればと思う。
特 集 地域の総合力を高めるOTの視点—知って活かそう 介護予防・日常生活支援総合事業
編集担当 寺門 貴
新しい地域支援事業の全体像と作業療法士への期待 太田 睦美 ●16
地域ケア会議と作業療法士の役割 佐藤 孝臣 ●21
認知症初期集中支援チームと作業療法士の役割 山口 智晴 ●26
認知症カフェと作業療法士の役割—認知症カフェ活動を通じて 工藤 克行,他 ●31
介護予防事業と作業療法士の役割 久世 昭宏,他 ●35
地域リハビリテーション活動支援事業の受け皿をめざして—茨城県作業療法士会の取り組み 大場 耕一 ●40
烈闘作業療法
多機能型事業所で地域産業を守る 田上 純一さん ●8
連 載
生活行為向上リハ実施のための臨床ガイダンス
生活行為向上リハビリテーション加算算定に当たっての当事業所の工夫 二木 理恵 ●45
お家を変えよう!
介護保険と住宅改修③ 児玉 道子 ●54
片麻痺の方への促通反復療法 OT実際編
脳卒中片麻痺の新たな治療法 促通反復療法 大郷 和成 ●59
作業療法士が創る嚥下障害へのリハアプローチ
作業療法士が創る嚥下障害に対する地域支援活動—連載の総括と今後の展望 寺本 千秋 ●64
OTケアマネジャーはこうした!
リハビリテーションも,人の生活の奥ゆかしさにはかなわない? 大塚 英樹,他 ●68
コラム
らんどまーく
OTの視点を伝えること 井上 慎一 ●6
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
家族からみた認知症の症状(その3) 上城 憲司,他 ●49
女性OT ひとりで悩まないで
介護と仕事との両立 宇田 薫,他 ●50
なんでもできる100均グッズ
使いやすい コントローラー 大塚 英樹,他 ●52
私が出会った作業療法
リハビリしながら,日々前向きに 徳山 安之 ●56
OTとして私が大切にしていること
生きる意味は「作業」の中に 濱西 由希子 ●72
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●75
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
書評 ●80,81,82
次号予告 ●84
はじまりのことば…川口 淳一 ●巻頭頁
既刊案内 ●48
インフォメーション ●83