遊びが拓く作業療法の世界
「遊び」は発達過程において欠かすことができない作業活動であり,人の生活においてもさまざまな部分で存在していると思われる。発達過程においては,感覚運動経験となり,認知過程,情動的側面へ働きかけ,社会性など多くの要素を経験させてくれる非常に重要な作業となる。人の生活においても,仕事や課題と常に対比して遊びの要素が存在し,日常とそうでない世界を提供してくれる存在でもある。
ロジェ・カイヨワ1)は遊びを競争・偶然・模倣・眩暈の要素に分類し考察しており,これらは人の作業や生活に大きな変化をもたらしてくれる非常に重要な要素となりうる。
これまでも遊びの特性を生かした作業療法は数多く実践されていると思われるが,本特集では,今一度,遊びのもつ特性を理解し,作業療法場面への応用実践につなげていくことの重要性について,深く理解できるような内容を企画した。特に,遊びを通して生まれるさまざまな効果や作業療法の可能性を,実践的内容をもとに報告していただいた。
1)ロジェ・カイヨワ(著),多田道太郎,塚崎幹夫(訳):遊びと人間.p.44,講談社,1990
特 集 遊びが拓く作業療法の世界
編集担当 三瀬 和彦
「遊び」とは―遊びの特性と作業療法 辛島 千恵子 ●295
けん玉遊びを取り入れた作業療法―「遊び」は心身を動かし,地域を動かす 吉本 秀一 ●300
「遊び」で創る筋ジストロフィーの可能性―遊ぶことの意味を考える 田中 栄一 ●305
「遊び」と作品づくり―作品づくりの中にある遊びと創造性 森田 淳 ●310
ミニ四駆とまちづくり―「遊び」から異(多)業種連携を考える 寺門 貴,他 ●317
「遊び」から広がる活動―おはじきサッカー 鴻井 建三 ●321
烈闘作業療法
民間企業OT の先がけ―新たな環境を創り続けて 横山 由梨子さん ●288
連 載
OTケアマネジャーはこうした!
利用者の「したい」を支えるために 大塚 英樹,他 ●338
これから臨床実習にでる君へ
クライエントと実習生から気づかされた大切なこと 小野瀬 剛広 ●342
生活行為向上リハ実施のための臨床ガイダンス
生活行為向上リハビリテーション実施加算算定に至るまでの取り組み 都甲 幹太 ●347
レストランOT 奮闘記―汗と涙の就労支援
「洗い物しかできない障がい」って? 仲地 宗幸 ●350
片麻痺の方への促通反復療法 OT 実際編
前腕回内外・手関節の促通手技 大郷 和成 ●354
コラム
らんどまーく
地域で活きるOT になるために 久世 昭宏 ●286
OT として私が大切にしていること
にこにこ笑顔 吉岡 和哉 ●326
掘り起こせ“やる気”OT スコップ隊 認知症の人編
家族からみた認知症の症状(その6) 上城 憲司,他 ●329
女性OT ひとりで悩まないで
仕事と家庭の両立がむずかしい時 宇田 薫,他 ●330
なんでもできる100 均グッズ
これだけで十分! そのまま使える100 均グッズその2 灘 裕介,他 ●332
私が出会った作業療法
「やりたい」をやってみる,「やりたい」が増えていく 安川 英子 ●334
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●360
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
インフォメーション ●363
はじまりのことば…川口 淳一 ●巻頭頁
既刊案内 ●337
次号予告 ●365