未来投資会議の流れの中でOTの生きる道―突入する保険外サービスの新たな時代
政府は2016年9月に経済成長戦略の司令塔として新たに発足した「未来投資会議」の初会合を開催して,公的保険外サービスとの組み合わせによる,健康寿命延伸のための効率的・効果的な医療・介護サービス提供体制の必要性を述べている1)。消費税増税の見送り,社会保障費の圧縮により,医療や介護をとりまく情勢は今後さらに厳しくなると予想される。
このような流れから,公的保険外サービスの需要は増加していくと考えられる。実際に,「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集―保険外サービス活用ガイドブック」(以下,ガイドブック)の中でも紹介されているように,民間企業などによる公的保険外サービスへの参入が加速している。また,経済産業省によるヘルスケア産業創出も注視しなければならない。厚生労働省・農林水産省・経済産業省の3省合同でガイドブックを発刊した背景にはどのようなメッセージが隠されているのか。そのような中で,OTは公的保険の枠内に留まっていていいのだろうか。地域への移行が叫ばれている中,保険外サービスへの関わりも意識しなければならないと考えている。作業療法の知識を活用して,地域経済に活力を与えて雇用創出につなげることも必要かもしれない。
OTの必要性,可能性を考えるのであれば,その需要は保険外にあるのかもしれない。現在の保険制度の中で限界を感じて悶々としている読者も多いのではないだろうか。本特集では,保険外サービスの動向と実践者の取り組みを紹介する。読者の皆様の職域拡大やステップアップにお役立ていただければ幸いである。
引用文献
1) 日本経済再生本部:未来投資会議(第1回)配布資料 資料4 成長戦略の課題と今後の検討事項.p.7,2016〔http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai1/index.html〕
参考文献
1) 厚生労働省,農林水産省,経済産業省:地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集―保険外サービス活用ガイドブック.厚生労働省・農林水産省・経済産業省,2016〔http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160331007/20160331007–1.pdf〕
2) 日本経済新聞 電子版「厚労省,過剰なリハビリ削減」2016年4月4日付
特集 未来投資会議の流れの中でOTの生きる道―突入する保険外サービスの新たな時代
編集担当 寺門 貴
介護保険外サービスとシニアビジネスの展望 紀伊 信之 ●361
保険事業と保険外事業での多様な取り組みを通して 儀間 智 ●366
コンサルタント業という新しい作業療法士のあり方の実践 鎌田 大啓 ●370
作業療法士の専門性を活かした椅子作りビジネスの可能性 野村 寿子 ●375
作業療法士的な放課後等デイサービスの実践 大郷 和成 ●380
ビジネス職の視点から介護保険外サービスの可能性を考える 榊原 正博 ●384
烈闘作業療法
いつでもどこでも,作業療法で支えることができる人がいて,地域がある 谷川 真澄 ●352
連載
アクティビティの実践講座
メタリックヤーン 熊代 有希枝 ●398
病棟リハの在宅での活かし方
在宅生活につながる急性期の作業療法 大堀 具視 ●404
CIセラピーのいろは
反復・課題指向型練習―シェーピング(shaping) 田邉 浩文 ●408
ADL潜考と実践
更衣動作への介入 川下 勇太朗 ●413
コラム
らんどまーく
ステイタス(status)という生活感 川口 淳一 ●350
【最終回】掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
作業療法士のマネジメント(その6) 上城 憲司,他 ●393
女性OT ひとりで悩まないで
働くお母さんと共にいて(後編) 宇田 薫,他 ●394
なんでもできる100均グッズ
100均グッズで簡単! 迷路遊び 宮坂 竜太,他 ●396
OTとして私が大切にしていること
対象者が人生を通して教えてくれたこと―挫折や失敗を経た12年間 冨永 美紀 ●401
編集部が見つけたトキメキ発表
第10回 日本訪問リハビリテーション協会学術大会in北海道
訪問リハビリテーション修了後の追跡調査 神馬 俊祐,他 ●419
在宅生活を続ける要介護者家族の介護負担感による心理的影響とは―気分と疲労のチェックリストを用いて 細田 忠博,他 ●422
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●425
はじまりのことば…川口 淳一 ●巻頭頁
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
インフォメーション ●392
既刊案内 ●424
次号予告 ●428