重度障害に対する活動・参加アプローチ―ふつうをサポートしよう!
近年,軽度者の活動・参加に対する具体的アプローチについて書かれている文献は増えたが,重度者を対象としているものは少ない。また,重度者ほど,障害の程度や環境面への配慮(物的・マンパワーなど)の必要性が大きく,活動や参加の視点を失いやすくなることが,一辺倒な治療・支援となりがちな要因とも考えられる。
国の高齢化に対する政策でもある地域医療構想。その中で,重度者における医療から介護の連携でのリハの役割は大きく,特にOT は自立支援型のケアマネジメントを提案する重要な役割を担っており,医療機関においても在宅復帰後の自立支援をイメージした支援が必要である。回復期リハを中心とした入院医療では,在院日数の短期化・外来リハの撤廃などのためには,医療機関のOT による在宅分野のケアマネジャーやリハスタッフとの連携(リハ—ケアマネ・リハ—リハ連携)が重要であり,たとえば「目標設定等支援・管理料」の制度での働きかけが期待される。
在宅では,介護保険利用限度額の問題だけではなく,どうしても重度者は退院・退所時より通所リハではなく通所介護,訪問リハではなく訪問看護といった流れがあるように思う。在宅において,OT が障害の程度に関係なく自立支援型の支援や技術を提供できることを明確にすることで,ケアプランや地域支援事業において,制度の障壁にとらわれず,多くの他職種や国民から作業療法が選択されるようになることが理想である。それが,適切なサービスの活用にもつながるように思う。
また精神障害分野においても,近年では重度者(高次脳機能障害も含む)も地域で支えることの重要性や効果を示す報告があり,より環境面に考慮した治療や支援のなかで,OT が活躍できるようになることを期待したい。また,発達障害分野においては,知的障害や身体障害,重複障害と状態に応じて支援の方法が大きく異なる。地域医療構想の小児在宅医療の充実では,おもに医療機器などを必要とする重度身体障害児を対象としているとも考えられるが,OT は障害区分にとらわれずに社会的支援を考えなければならない。
そこで本特集では,重度身体知的障害児者,神経難病者,医療機器装着者,重度精神障害者,要介護4~5 の高齢者などへの支援を取り上げる。
特集 重度障害に対する活動・参加アプローチ―ふつうをサポートしよう!
編集担当 寺本 千秋
回復期リハビリテーションでの支援―多職種協働・連携で地域生活へつなげる 杉本 徹 ●446
精神障害を有する人に対する支援―クリニック訪問作業療法による他院からの退院支援 菅沼 映里 ●452
小児期障害者への支援―作業バランスの視点で「その人らしく生きる」を支える 石井 孝弘 ●459
通所介護での支援―社会的孤独感の解消や目標をもつ取り組み 谷川 真澄,他 ●464
通所リハビリテーションでの支援―施設内の互助機能を活かした自立への取り組み 下村 美穂 ●469
訪問リハビリテーションでの支援―「○○できる,○○したい!」を見出し支える 小林 大作 ●474
烈闘作業療法
作業療法へ問いかけ,乗り越える感性と知識 酒井 康年 ●438
連載
【最終回】CIセラピーのいろは
シェーピング実践編―臨床現場で使われる徒手的アプローチと課題設定 田邉 浩文 ●480
病棟リハの在宅での活かし方
暮らしを支える作業療法マネジメント 岩永 輝明 ●485
アクティビティの実践講座
看板づくり 田中 梨穂 ●491
ADL潜考と実践
入浴動作への介入 門脇 達也 ●505
コラム
らんどまーく
作業療法って何でしょう―キーワードから考える 浅野 有子 ●436
【新連載】新人OTあゆみちゃんの回復期リハ病棟記
作業療法ってなに? 吉川 歩 ●496
女性OT ひとりで悩まないで
持病を抱えながら働くこと 宇田 薫,他 ●498
なんでもできる100均グッズ
コロコロ転がる,からくり装置 宮坂 竜太,他 ●500
OTとして私が大切にしていること
医療機関の作業療法士と特別支援学校の教員を経験して 村上 慶介 ●502
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●510
はじまりのことば…川口 淳一 ●巻頭頁
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
インフォメーション ●494
書評 ●495
既刊案内 ●504
総目次 ●513
次号予告 ●517