赤ちゃんに今してあげたいこと
乳児期の問題は,おもに運動発達の遅れと思われがちである。しかし,これまでの研究では反射に基づく出力に重きが置かれていたものの,近年の研究より,表出は限られているが,乳児はわれわれでは聴き分けられないような音の区別が処理できたり,胎児期からの記憶が残っていることが証明されるなど,乳児の脳機能の多様性が示されるようになってきている(もちろん,その後,神経ネットワークの刈り込みにより,その多様性が行動として示されることは少なくなるが)。
現状では,OTが乳児期に関わることは多くはないが,運動発達の視点のみならず,認知や情動への寄与を考えると,今後,OTの支援・介入も求められるようになるのではないかと考える。
インターネットや書籍から,how to的な育児の方法を得ることが容易になってきている時代ではあるが,情報過多になってしまったり,情報を転々とし,整理しきれず,子育てに対し不安を抱える両親も少なくない。そこで,乳児期に介入できるOTの有用性を示すことが重要と考える。
本特集では,OTによる赤ちゃん支援の実践と悩みを取り上げ,これからOTの職域を広げることにつなげたいと考える。また,子育てを通して,OTの視点が何気なく活用されていることを示し,身近な赤ちゃんと触れ合う時に,ほんの少しOTとして関われるきっかけになればと考える。
赤ちゃんに今してあげたいこと
編集担当 灘 裕介
乳幼児健診を通しての赤ちゃん支援―悩みと課題 石原 詩子
個別作業療法で赤ちゃんとお母さんを支援するポイント 灘 裕介,他
地域に根づく児童発達支援センターとして,赤ちゃんに今してあげたいこと 灘 裕介,他
障がいをもつわが子の子育て—父として,作業療法士として 森村 慎吾
子育てに活かす作業療法,作業療法に活かす子育ての経験 渡邊 基子
烈闘作業療法
最後まで面白くさわやかに過ごすために 浅野 有子さん
連 載
【新連載】未来の作業療法☆設計図
“複業”からひも解く作業療法の未来デザイン 細川 寛将
責任者はつらいよ,でも楽しいよ
確かな現場実践経験はスタッフとのコミュニケーションにより自身を「責任者」へと導いてくれる 宇田 薫
【最終回】ADL潜考と日常実践
入浴動作の評価と介入 三瀬 和彦,他
コラム
らんどまーく
平成から新しい時代に向けて 田尻 寿子
OTとして私が大切にしていること
けん玉で広がる作業療法の世界 吉本 秀一
女性OT ひとりで悩まないで
多くの女性OTが悩む「周囲の理解」について改めて考える—子育てを終えた女性OTから伝えたいこと 宇田 薫,他
なんでもできる100均グッズ
簡単ズボンエイド 濱田 一登志,他
【3年目編 新連載】3年目OTあゆみちゃんの回復期リハ病棟記
新人OTがやってきた 吉川 歩
【新連載】社会の目・OTの目
作業科学のレンズで見た“大分県手づくり万菜おせち”の意味は? 葉山 靖明
「2018年版SDGsインデックス&ダッシュボード」が公開―日本は順位後退 宮田 千恵子
レポート
産み育てやすい社会に向けて 泉 真理
アラカルト
はじまりのことば…川口 淳一
カメラマン川上哲也の見た世界
書評
既刊案内
インフォメーション
今月の表紙の「ことば」
次号予告