家族と共に考える作業療法
作業療法の対象は当事者(障害者)であるが,その当事者を日頃からサポート(直接介入)し,多くの時間携わっているのは家族である。
医療や介護サービスの充実は増しているものの,そのサービスすべてが当事者に行き届いているわけではなく,医療機関や介護事業所からのサービス機会の頻度やその費用の影響もあり家族が当事者へ直接介入していることも少なくない。核家族化が進み頼れる親族が周りにおらず老々介護のような負担も増す中で,時には障害は当事者のみならず家族にも影響を及ぼしている。また,家族の感情表出(expressed emotion:EE)が当事者への悪影響や再発原因となるという研究結果も出ており,家族の精神的負担感(介護負担)を改善するような家族支援は現代社会においてとても重要になってきている。
今回の特集では,作業療法士から家族へ,その家族から当事者へというような「家族を介在した」間接的な作業療法の展開を紹介する。家族へのアプローチは家族の負担感を軽減し,家族自身が元気になり(エンパワーの機会),そのことが当事者にも好影響となり得る。もちろん家族の負担を軽減し楽になることも重要だが家族の「やってあげたい」という気持ちや自己肯定感(自己効力感)を大切にし,もとの家族の形を取り戻すことや新たな家族の形を構築する作業療法の術を深めたい。
家族と共に考える作業療法
編集担当 朝倉 起己
クライエントではなく家族にアプローチするという発想―家族心理教育を例に 稲垣 貴彦,他
作業療法と家族 朝倉 起己
家族支援の実際―精神障害 今別府 学
高齢者の家族支援―家族のこれまでと今,つなぐ想いはこれからに 藤井 孝枝
“いままでいきてきたなかで,いちばんたのしかった!!”セラピィを通した家族支援―園では優等生,家では全介助のKさんの事例から 水科 順子
神経難病患者の家族支援 関谷 宏美
家族による家族への支援 田崎 輝美
連 載
はじめての患者さん
はじめての頸髄損傷患者Iさんから教わっていること 岡本 宏二
Allenの認知能力障害モデル
Allen認知レベルのスクリーンの使用方法の紹介 岡村 太郎,他
見せます!OT室のちょっとしたアイデア
生きる力をつけるための作業療法室 青木 佳子
未来の作業療法☆設計図
可能性にあふれた“No Role No Life”な社会をつくる未来デザイン 鎌田 大啓
責任者はつらいよ,でも楽しいよ
管理職として踏み出せなかった私が,一歩前進できた転換点 杉本 徹
甦るヒストリー―再掘作業療法:私のたどった細道
広い野原へ 浅海 捷司
コラム
らんどまーく
いつまでも若い者で在り続けるため初心不可忘 清水 兼悦
OTとして私が大切にしていること
3つの探求 中村 茂美
女性OT ひとりで悩まないで
私が思う「働く女性」―今まで表現してこなかったこと 宇田 薫
社会の目・OTの目
最近話題の非認知能力ってなに? 宮田 千恵子
作業療法の場面でまちがいさがし パント大吉
【3年目編】3年目OTあゆみちゃんの回復期リハ病棟記
脱力系男子森本くん 吉川 歩
アラカルト
巻頭頁 はじまりのことば…川口 淳一
目次前 カメラマン川上哲也の見た世界
今月の表紙の「ことば」
既刊案内
インフォメーション
次号予告