この世に生まれた命は、動物であれ植物であれ、再び地に還るという運命をたどる。人間もその例外ではない。このように絶対に避けられない死があるからこそ、宗教や哲学が生まれた。もし人間が絶対に死なない存在であるなら、人間は大いなる存在に対して畏れを抱くこともなく、傲慢の限りを尽くすであろう。
自分の存在や意味や、この世に生きた証に関わる深い苦悩や心の痛みをスピリチュアルペインというが、そのケアに関わる範囲は広い。医療におけるヒューマニティというテーマひとつをとりあげてみても、その深いところでは、スピリチュアルな側面が切っても切れない問題になってくることが明らかになってきている。
--柳田邦男氏
生死が医療の延長線上で考えられる傾向のなか、生命とは何か、病に苦しむ人々の心身を救うにはどうすればよいのかなど、わが国の医療者と宗教家が手をむすび、さまざまな問題提起を行い、解決法を探る。そして、スピリチュアルペインの問題をより根源的なところから理解するうえで、とても示唆に富む内容となっている。