「いのちとは何か」という問いに向きあう看護者のための理解と実践の入門書
大きな災害に直面し、身体的な「生命」のみならず、「こころ」への支援・分かち合いが多くの人にとって大切と感じる時代になった。危機に陥った状況にもかかわらず、人と人とのつながりの深さ、触れ合いの豊かさに気づきを得る光景がメディアなどを通じて頻繁に目にされた。その根底には、やはり日本の文化、宗教、国民性、歴史などを背景とした思いやりのようなものが伝わってくる。
本書は科学的看護をもとにしつつも、科学や人間の力では解決できないことにも目を向け、より日本的な看護とは何かを具体的に、分かりやすく解説した仏教看護の入門書である。人にとって宗教とはどういう意味をもつのか。仏教伝来以来、密接な関係のあった看護との歴史はどうであったのか。仏教看護の定義、理論上の主張、方法論はどう示されるのか。仏教の真理の教えはどう看護に反映されるのか。仏教看護を実践するうえで大切なこととは何か。
看護する者、される者の隔たりを取り払い、お互いの人間的成熟へ向けた看護のあり方と実際が願いや祈りとも相まって、看護を必要としている方に届いていくに違いない
まえがき
一章 看護に宗教的視座が必要な理由
宗教に対する看護学生や看護者の反応
人間と宗教
看護と宗教
二章 「仏教看護」であることの意味
あえて看護に「仏教」を付けたわけ
仏教を抜きにしては語れない日本の看護の歴史
仏教文化圏で育まれてきた日本人
日本的な看護としての仏教看護
三章 科学的思考を基本とする看護と仏教看護の違い
科学的思考・非科学的思考
科学的思考を基本とした看護
客観的、科学的にとらえきれない「心」や「たましい」の問題
科学的・非科学的思考双方を大切にした仏教看護
仏教看護は、より日本的な看護論の一つ
四章 仏教看護の本質
新しい概念の理解・定義
仏教看護の定義と概念化
成熟の概念
仏教看護の前提と理論上の主張
仏教看護の主要概念(メタパラダイム)
五章 仏教看護の特徴
科学的・非科学的思考をともに大切にしていること
科学的思考法だけでは解決できないことへの示唆があること
わが国にふさわしい個別性と独自性を大切にした看護をめざしていること
利用者も看護者もともに人間的成熟をめざしており、公平であること
六章 仏教看護の基本となる教え
仏教の教えにみる「苦」の記述
三法印の教え
四諦の教え
八正道の教え
中道の教え
縁起の教え
四正勤の教え
慈悲・抜苦与楽
四無量心の教え
四摂法の教え
身口意の三業
人生において大事なもの
七章 仏教看護における看護過程
仏教看護と看護過程
看護過程の基本となる教え
七覚支の教え
仏教看護における看護過程と問題のとらえ方
仏教看護の方法論としての看護過程の特色
八章 仏教看護を実践するために大切なこと
科学的思考を基本とした知識・技術を身につけること
生死観を育むこと
仏教の教えを大切にした看護者の資質と態度を身につけること
仏教の教えに関心を払うこと
看護実践を評価し、その結果を発表し、学び合う機会をもつこと
九章 仏教看護実践に向けての勉強方法
仏教看護の理論書
仲間とともに学び合う場としての学会や研修会
仏典を手にし、教えに触れてみること
参考となる仏典や仏教の理論書
あとがき