「私自身は今、末期の患者さんのケアについて、人の生について、死について、みなさんにお伝えすることが自分の使命と思っています。ホスピス医という使命を生きてきて、私の体験と患者さんやご家族から教えていただいたことを懸命に言語化し、とらえ返してきた中から得られたことです」(柏木氏)
「私に与えられた使命は何かと言うと、それは病理学であり、がん学の勉強もしましたけれど、今は“がん哲学外来”もひとつあると思います。ただ、自分にはどういう使命があるかということを日々、考えています」(樋野氏)
著者は、“主流”である治療や延命の医療とは一線を画して、ホスピス緩和ケアやがん哲学外来という“本流”に身を置いている。そして、生い立ち、医師としての原点、人生での出会いやよき生と死など、エッセー、対談をとおしてMission(使命)としての生き方を語る。
医療の主流と本流 -「まえがき」に代えて柏木哲夫
ホスピス医としての使命 (エッセイ1)柏木哲夫
使命、宿命、運命
患者さんを“丸ごと診る”医師になりたい
アメリカ留学を決めた「運命」
アメリカで精神科レジデントとして働く
「ホスピスの原型」との出会い
「がん哲学外来」の原風景 (エッセイ2)樋野興夫
1300年前の医療発祥の物語
インプットされたイメージ
近未来の医療のさきがけとして
ホスピスケアの原点に立って (エッセイ3)柏木哲夫
ホスピスケアの始まり
OCDPチームの働き
末期の患者さんのための場が欲しい
ホスピスをつくる
だれから、いかにして、学ぶか (エッセイ4)樋野興夫
尊敬する人物を、ひたすらに学ぶ
新渡戸稲造と内村鑑三
南原繁と矢内原忠雄
吉田富三
出会いで変わる人生ダイアローグ1
「さみしさ」の子ども時代
家の中にあった看取りと死
「人間は死ぬ」
大学浪人時代の出会い
病理医だからできること
ホスピス医に必要なこと
キリスト教の信仰を得たとき
支える・寄り添う・背負うケア (エッセイ5)柏木哲夫
震災後の悲しい現実
心の準備のない死の悲しみ、複雑に重なり合う悲しみ
「差し出す医療」と「支える医療・ケア」
寄り添うケア・背負うケア
ユーモアの力
医療の隙間を埋める (エッセイ6)樋野興夫
陣営の外へ
アスベスト・中皮腫外来
「がん哲学外来」が必要だ
根っこでの人と人のつながりダイアローグ2
時の後押しで「がん哲学外来」へ
「がん哲学外来」の底流にあるもの
患者さんに学んだことを発信する
そのひとりのために、主体的に隣人になる
言語化する、言葉を伝えるということ
人生を考える (エッセイ7)柏木哲夫
人として生まれ、人として生きる
人は体と、心と、魂を持つ
スピリチュアリティが覚醒するとき
「魂の痛みをケアする」ということ
死を迎えるよりつらいこと
「がん哲学外来」の使命 (エッセイ8)樋野興夫
「がん哲学外来」とは何か
細胞も人も、使命があってこそ生きる
メディカルタウンの実現を目指して
よき生と死のための使命ダイアローグ3
気持ちをわかり、感情に対する手当てをする
自分の気持ちを押しつけず、他人の必要に共感する
「お節介」と「受身の踏み込み」
牧会カウンセリングの可能性
なぜ「お祈り」なのか、「安易な励まし」なのか
人間は、持っているものを使いたがるけれど
スタッフの癒しの場、学びの場としての「がん哲学外来」
「小さな死」体験が、死を受け入れる力を養う
「よき死」のために
よき生を生き、使命を果たす
あとがき-恩師 菅野晴夫先生に捧ぐ 樋野興夫