第7回フォーラムは「私の死、愛する人の死とどう向き合うか」というテーマで、誰にとっても最も身近な一人称の死、二人称の死の問題を掘り下げた。死は誰の死なのかという「人称性」に焦点を合わせて、死をめぐる問題を実感的かつ理念的に捉えなおした。
続いての第8回フォーラムでは、東日本大震災という危機に直面した年だったことを受けて、喪失の悲しみと心の絆という問題に真正面から取り組んだ。テーマは、「いま、問われる心の絆」とした。
このように第7回と第8回のフォーラムは、「生と死」にかかわるきわめて重要であり、身近な視点から、いろいろな専門分野で積極的に活動し、発言しておられる第一人者に登場いただいた。この2回のフォーラムをまとめた本書は、非常に密度の濃い内容になっている。
--柳田邦男氏
愛する人の死とどう向き合ってきたか、自分の死の迎え方をどのように考えるのか、また「死ぬ」「死なれる」という言葉に隠された意味と、自分との実際的な関係性はどうなっているのか。さらに、東日本大震災を経験して被災者と支援者のかかわりから生まれたものは何だったのか。「生と死」の深い思索から、死の文化の創造がなされ、それが生きること、命を大切にすること、そしてそれらをより豊かにする道に通じる。
まえがき 萩山祥光
第1部 私の死、愛する人の死とどう向き合うか
1)今、生老病死を問い直す-現代に生きる空海 静 慈圓
2)妻を看取る日 垣添忠生
3)「死なれる」という経験 鷲田清一
4)悲しみは真の人生のはじまり 高木慶子
〈語らい〉私の死の迎え方 柳田邦男・井形昭弘・井村裕夫・南 裕子・山折哲雄・吉田 修
第2部 いま、問われる命と心の絆
1)仏教思想にみる他者への思いやり 藤田光寛
2)死の臨床 -新たな課題と展望 柏木哲夫
3)仏教、悲しみから生まれる力 島薗 進
4)仏足頂礼高野山足湯隊-被災地における傾聴ボランティア 辻 雅榮
5)看取りの場で宗教者とチームを-被災者、患者の体験から在宅緩和ケアを見直す 岡部 健
〈語らい〉危機の時代に問われる日本人の価値観、死生観 柳田邦男・山折哲雄・岡部 健・島薗 進・辻 雅榮・藤田光寛
あとがき 柳田邦男
(〈語らい〉のお名前は発言順)