自ら動くことのできない、またはその範囲が狭小化している、そして介助者に思いが伝わらないということも推測できる重度対象者の場合、セラピストによる介入がさらに必要になる。セラピストにはそれを察知して、対象者の思いをいかに読み取り、いかに支援するかが求められる。
現在のリハビリテーション情勢は、日常生活活動(ADL)の自立度をエビデンスとする傾向にあるが、重度であればあるほど自立度は低くなる。そのような対象者にとって大切なことは「いかに楽になるか、動けるか」、また介入者にとっては「対象者の能動的な動きをいかに引き出し、信頼を得るか」ということにある。
上巻では、総論から始まり、臥床傾向に対する具体的アプローチの章では、関節モビライゼーション・寝返り・起き上がり・座位・立位~介助者へのアプローチまでをまとめている。そして重複障害の章では、整形疾患、再発・糖尿病や人工透析まで、疾患別理解のポイントとともに整理をしている。本書が重度障害の対象者はもとより、セラピストの方々へのリハビリテーションのメッセージとして届けたい。
I 総 論
重度障害者への活動分析アプローチ 山本伸一,他
II 臥床傾向に対する具体的アプローチ
1.疾患別理解のポイント 伊藤克浩
2.関節モビライゼーション&促通-上肢 箭野 豊
3.関節モビライゼーション&促通-下肢 下里 綱,他
4.重度障害者の寝返り 伊林克法
5.起き上がり動作 北山哲也
6.パーキンソン病 門脇達也
7.座位への移行 三瀬和彦
8.立位へのチャレンジ 北山哲也
9.呼吸-呼吸器疾患を合併した重症四肢麻痺患者への介入 宮下正彦
10.頭部外傷-頭部外傷後に四肢麻痺を呈した症例への関わり 福澤 至
11.介助者への指導 新里 光,他
III 重複障害(1)-骨折など
1.疾患別理解のポイント 高村浩司
2.大腿骨頸部骨折-脳梗塞発症後に大腿骨転子部骨折を呈した症例へのアプローチ 末吉恒一郎
3.変形性関節症 福富利之
4.再発-同側片麻痺 砂川 剛
5.再発-両側片麻痺者への治療的アプローチ 山根佳子,他
IV 重複障害(2)-その他
1.排便障害 木村奈保美,他
2.糖尿病-糖尿病を合併した左片麻痺患者との関わり 宮下正彦
3.透析患者に対するADLアプローチ 小林昭博,他