自ら動くことのできない、またはその範囲が狭小化している、そして介助者に思いが伝わらないということも推測できる重度対象者の場合、セラピストによる介入がさらに必要になる。セラピストにはそれを察知して、対象者の思いをいかに読み取り、いかに支援するかが求められる。
現在のリハビリテーション情勢は、日常生活活動(ADL)の自立度をエビデンスとする傾向にあるが、重度であればあるほど自立度は低くなる。そのような対象者にとって大切なことは「いかに楽になるか、動けるか」、また介入者にとっては「対象者の能動的な動きをいかに引き出し、信頼を得るか」ということにある。
下巻では、嚥下障害・コミュニケーション・高次脳機能障害・認知症・activityへの展開とした。アプローチ・サマリーシートでは、症例の原疾患・治療および介入方法・治療時間と結果が一目でわかる構成となっている。それぞれの章における理解のポイントと症例への具体的アプローチが満載である。
I 嚥下障害
1.疾患別理解のポイント-重度摂食嚥下障害者へのアプローチ 長谷川和子
2.摂食と姿勢 石山寿子
3.口腔へのアプローチ 河野千穂
4.経口摂取への移行と食形態の選択 畠山尚文
5.上肢機能-嚥下障害を伴う症例の上肢機能の役割に着目した関わり 三瀬和彦
II コミュニケーション
1.疾患別理解のポイント-考慮点と活動分析アプローチ 広田真由美
2.失語症 磯野弘司
3.意識障害者に対するリハビリテーション-コミュニケーションとは? 井上 健
III 高次脳機能障害
1.疾患別理解のポイント-脳卒中に伴う重度高次脳機能障害の理解と基本的支援 高橋栄子
2.半側無視 山田勝雄
3.失 行 向川公司
4.前頭葉症状-覚醒保続系 大久保紗穂子
5.前頭葉症状-情動系 関根圭介
IV 認知症
1.疾患別理解のポイント 長澤 明,他
2.アルツハイマー型認知症-長期経過をたどる症例への関わり 渡部昭博
3.中等度~重度認知症に対するアプローチ 長澤 明,他
V activityへの展開
1.「積み木」への展開-不快様の反応を強く呈し,開眼が困難な重度認知症高齢者に対して 広渡一隆
2.小集団で歌う活動-発動性の低下,動作の開始遅延,注意障害を呈した1症例 佐藤靖伸
3.ロープを用いたactivity 工藤 亮
4.進行性核上性麻痺に対する治療への1考察 水原 寛