本書籍は、「21世紀高野山医療フォーラム」第9回の内容をまとめた。東日本大震災に見られた災害によるいのちの危機と年3万人以上という多きに上る自死問題の2つの時代的な課題を取り上げて、多角的に論じた。いずれも、この国におけるいのちを守る社会的基盤の脆弱さがさらけ出された事態だが、両者それぞれに向き合い救済の努力をしている実践者の報告は、問題克服への道を考えるうえで示唆に富んでいる。
--柳田邦男氏
喪失や絶望の中から、「私の魂はこういう経験を求めているのだ」という気づきが生まれ、悲しみを抱えつつも、生きなおそうとするいのちの鼓動が甦る。そうした精神性を引き出すものは何か。危機の時代に医療ができること、宗教ができることを問う。
まえがき 髙松哲雄
1 震災後の人間(1)
「被災者」から「震災経験者」に変わる日 菅野 武
2 震災後の人間(2)
たくさんの人が亡くなった後で-準備のない死をどう受け止めるか 池澤夏樹
3 自死3万人、再生の道(1)
「生きなおす力」を探る-悲しみこそ真の人生のはじまり 柳田邦男
4 自死3万人、再生の道(2)
悲しむ力から育む力へ-見守る息づかいとしてのスピリチュアリティ 井上ウィマラ
5 語らい
危機の時代における生と死 柳田邦男・池澤夏樹・井上ウィマラ・井村裕夫・菅野 武・森崎雅好
あとがき 柳田邦男