ある障害者の一言、「俺たち、親がいなくなったら、どう生きていけばいいのだろう」が活動のはじまりである。生活や社会参加の場としての施設が周りにない状況で、「ないなら、つくろう!」と思い立ち、実行に移した。しかし、周囲の自治会からの反対、スタッフの造反、利用者の意識など、立ちはだかる壁、壁…。それらをどのように乗り越えていったのか。
現在、茶の花福祉会のどの施設でも、ありとあらゆるリハビリテーションを取り入れている。駅伝、サッカー、市民とのふれあい祭りなど大規模なものから、手芸・木工・デッサンなどのクラブ活動、セラピー犬をお世話したり、物産販売コーナーで売り子をしたりとアクティビティの種類は限りない。知らずのうちに、楽しみながらリハビリテーションを行い、自立の芽が育っている。
この根底にある脈流は何か。スタッフには、支援は利用者を助けるものだけでなく、真の自立を目指したものであるという意識が根づいている。それはスタッフの人間的な成長を促すためにも、必要不可欠としている。重度障害者に関わるすべてのセラピストの必読書となっている。
まえがき 茶の花書籍企画プロジェクト
第一章 重度障害者でも社会活動に参加し、ふつうの暮らしを
オープンな雰囲気の入所施設-大樹の郷/若く、重い障害の人たちのために/大樹の郷の一日/戸外歩行でセロトニンを分泌させる/ダイナミックリズムでリハビリテーション/食事で生活習慣病予防/目が合う、笑顔が出る、しっかり歩ける/目標は「三〇歳までにグループホームへ」/重い障害の人たちが暮らしを営む施設-大樹の家/活発な集団活動で、「どんどん外に出て行こう」/グループ制の小集団で助け合う/利用者の拠点としての二つの役割/農産物、パン、団子、うどんのお店が集まるふじさわ大樹作業所/茶の花福祉会初の就労継続支援A型施設/茶の花福祉会で初めてのこと/助け合う関係に/互いにスキルアップを目指して
第二章 施設でもプログラムでも「ないなら、つくろう!」が基本精神
「親がいなくなったら、どうやって生きていけば…」/「ないなら、つくろう!」挑戦のはじまり/「反対」の声を乗り越えて/「地元から」「困っている家庭から」「重度の人から」/「自主性の尊重」と「ふつうの暮らし」/「何もしないことが自主性の尊重なのか」/「どんどん表に出て行ってほしい」/「大樹館」オープン/半年で壁の修理費が五〇〇万円/「退所させることは認めません」/集団のプログラムに取り組むプロジェクト/「状況を一変させよう!」/すっかり変わった大樹館/「年金と合わせて月-〇万円」を目指す/「来たいっていう人は、受け入れようよ」/「団子は大きく、あんこをケチるな」/利益を生み出す仕組みをつくる/「ふつう」のために支援する/「人の成長は、集団への参加から始まる」/集団に入るから意欲が生まれる、助け合える/社会福祉法人の役割とは/補助金に頼らない経営を目指す/「福祉施設にも経営感覚が必要だ」/大樹の郷開設へ/自立へ向けて
第三章 やっと大樹にたどり着いた〈座談会〉
養護学校後の行き場がない時代/行くところがない-一〇年にも感じた一年間/施設への通所で疲れ果てて/このままでは親子心中になりかねない/パニックになると…/障害のある子は、一〇人いれば一〇人違う/理事長は切り捨てない、見放さない/子どもたちの活動、親たちの活動/大樹館で子どもたちは変化した/障害者の子は親より先に亡くなったほうが?/生き延びることが何より大事/これからの課題-年をとったらどうなるか
第四章 わきでる思いを社会的使命にかけて
理事長が現場に立つ姿/「適当でいいんだよ」/車庫の片隅に、家族九人が身を寄せ合って/おとなしく、泣き虫だった/障害のある子との出会い/アルバイト小学生/家事を手伝い、畑で働く/恐怖の小学校修学旅行/アイスキャンディーを売りまくる/仕事と中学校と/騒然とした社会/一生懸命働けば、人は見ていてくれる/しぶしぶ高校に進学/食品学の自由研究に興味をもつ/建設現場で人生を知る/高校時代の思い出/「政治の季節」の只中で/食品会社に就職/高利貸しにお金を貸した話/政治運動の世界への転身/市議会議員として働く/党を離れて/茶の花福祉会に打ち込む/受け継がれる思い
茶の花福祉会の歩み
決断、速攻力で重度障害者と共に歩む物語-あとがきに代えて… 石井 聖